「敵にダメージを与える(DPS)」、「敵の攻撃を耐える(タンク&Logi)」と並び、EVEにおける戦闘の要素として重要なのが「敵を妨害する」ことです。
EVEにおいて、敵を妨害する手段はElectronic-Warfare(電子戦)と総称され、これを略してEWARと言います。
多くの場合はPvPに用いられますが、PvEに有用なEwar装備もあります。
トラッキング妨害器。当てた船が装備しているタレットの性能を悪化させるEWAR。「TD」と略されることもあります。
「トラッキング」妨害器という名前ではあるものの、トラッキング速度だけでなく同時にタレットの射程も短縮させられます。
AmarrのEWAR艦が、これの妨害強度を向上させるボーナスを持っています。
Optimal Range Disruption ScriptとTracking Speed Disruption Scriptという専用のスクリプトがあり、これを装備することで射程短縮かトラッキング速度低下のどちらかに特化させることが出来ます。
出来る、と言うよりは、そうやって特化させて使うのが基本です。
敵の使っているタレットをきちんと認識し、彼我の速度差・サイズ差などを考え適切に用いることが出来れば、敵の攻撃を完全に封じることも可能です。
ミサイルに対しては全く効果がなく、ドローンがメイン火力の船にもほとんど効果が無いという欠点があり、汎用的に使いやすいEWARとはいえません。
とはいえ、PvP環境ではタレット艦の使用率が高い1)ため、敵主力DPS艦を無力化するためにこれを準備しても無駄になることは少ないでしょう。
効く相手には非常によく効くため、運用の仕方が問われるEWARです。
誘導妨害器。当てた船が装備しているミサイルの性能を悪化させるEWAR。TDのミサイル版です。もちろんタレットには一切効果がありません。
ミサイルの飛行速度、飛行時間と、爆発半径、爆発速度に効果があります。
TDと同様、AmarrのEWAR艦がこれの妨害強度を向上させるボーナスを持っています。
こちらも専用のスクリプトのMissile Range Disruption ScriptとMissile Precision Disruption Scriptがあり、前者は飛行速度・飛行時間妨害の射程短縮特化、後者は爆発半径・爆発速度妨害の実効ダメージ低下特化になります。
Tracking DisruptorとGuidance Disruptorは前提スキルが共通であるため、これらを総称してWeapon Disruptor(WD)と呼びます。
Electronic Counter Measures(電子対抗手段)、略してECM。
現実にもECMという概念はありますが、EVEにおけるECMとは「命中すれば、ECMを仕掛けている船以外に対するロックオンをすべて解除し、それ以外の船に対して20秒間一切ロックオンを出来なくする」というEWARです。「JAM(ジャム)」とも呼ばれます。
簡単に言うと「ECMを食らった船はECMを仕掛けている船にしか攻撃できなくなる」というものです。
EVEにおける様々な行動の起点となるロックオンの自由度を大きく阻害するもので、強力なEWARのひとつです。
しかし、「命中すれば」という部分が重要で、他のEWARとは異なり射程内であっても必ず効くというものではありません。
EVEの艦船には全て「センサー属性」と「センサー強度」という物が設定されています。
センサー属性は船の国籍により異なり、
の4属性が存在します。
そしてセンサー強度は、概ね小型艦ほど弱く、大型艦ほど強く設定されています。
ECMには、4属性それぞれに対する「妨害強度」が設定されており、1属性にだけ妨害強度が高く他は低いタイプと、4属性全てに同じ妨害強度を持つタイプとがあります。
CaldariのEWAR艦が、ECMの妨害強度を高めるボーナスを持っています。また、Blackbird、Kitsuneはこれの射程延長ボーナスを持っています。
更に、ECMは他のEWARと異なり、装備しているECMの強度を高める専用のMODが存在します。
ECMは、
命中率=対応する属性へのECM妨害強度/対象のセンサー強度
で求められる命中率に従い「乱数で」当たるかどうかが判定されます。
対応する属性への妨害強度がセンサー強度を上回っていれば射程内なら100%命中しますが、妨害強度がセンサー強度を上回ることはあまりなく、必然的に確率に左右される不確実な攻撃となります。
そのため、ECMを安定して運用するためには「強度ボーナスがある船に乗る」ことと「ECMの装備数を多くする」ことが必要になってきます。
また、重要な特性として「スタッキングペナルティが発生しない」ということが挙げられます。使う数が多くなればなるほどECMの命中率が純粋に上がります。たくさん使ったからといって損することは一切ありません。
これが重要になるのがEWARドローンです。TDドローン、RSDドローン、WebドローンやTPドローンは単体の効果が低いだけでなく、5機使えば5つの別のMODとして扱われることから強烈なスタッキングペナルティが発生し、有効に働くことはあまり期待できません。
それに対しECMドローンの場合、5機セットで使った時だけでなく、他の味方がECMドローンを使っていたとしても干渉しないため、常に効果が期待できます。このため、広く使用されるEWARドローンはECMドローンのみになっています。
なお、1隻の船に対して複数の船/ドローンがECMを仕掛けている場合、ECMが効いている/いないに関わらず、ECMを食らっている側はそれら全てに対してロックオンは可能です。
当たれば極めて強力なECMですが、弱点も幾つかあり、
等が挙げられます。
何度も言うようですがECMは極めて強力なEWARであり、敵の急所を無力化出来ればそれだけで味方を大きく有利にできます。
逆に言えば、無力化されることが味方の壊滅に直結するLogi役などは、必ずECM対策をしておかなければなりません。
ECM Burst(ECMバースト)はECMの一種で、スマートボムのような範囲型兵装です。
通常のECMとは異なり全属性タイプしかなく、また、当たってもロックオンがすべて外れるだけで再ロック不可時間はありません。
同時に使用できるECMバーストは1つだけなので、複数装備することに意味はありません。
この性質上、ECM強度とECMバーストの射程へのボーナスを持ち防御力も高いScorpionが扱うことが多く、またIntyのような軽量艦にこれを装備し、敵ドローン集団に突っ込ませてこれを無力化する6)といった使用法もよく見られます。
リモートセンサーダンプナー。当てた船のロックオン性能を悪化させるEWAR。通称「Damp(ダンプ)」、「RSD」など。
ECMと同様にロックオンを阻害するEWARですが、こちらは船のスキャン解像度とロックオン距離を悪化させるという、比較的わかりやすいものとなっています。
Targeting Range Dampening Script、Scan Resolution Dampening Scriptという専用のスクリプトが存在し、これらを用いることでロックオン距離短縮かスキャン解像度低下のどちらかに特化させることが出来ます。
とはいえいくらスキャン解像度を下げようと一旦ロックオンしたものは解除されないので、Targeting Range Dampening Scriptを用いてロックオン距離短縮に特化させて使われることがほとんどです。ロックオン距離を短縮させれば、遠くの対象へのロックオンを解除させられます。
GallenteのEWAR艦が、これの妨害強度を高めるボーナスを持っています。また、Celestisはこれの射程延長ボーナスを持っています。
遠くのものをロックオンできなくするということは、遠距離攻撃を封じるということにほかなりません。
レールガンやクルーズミサイルなどを装備した長射程DPS艦や、攻撃を避けるためにフリートから距離を取ることが一般的なLogiやEWAR艦などを封殺するのに最も効果的なEWARです。
Damp自体が射程の長いEWARなので、先手を打って敵のEWAR(特にECM)を封じる事が可能で、そしてそれが重要な役割であるとも言えます。
また、ECMとは異なり当たれば確実に効くEWARであるため、専任のEWAR艦を用意して運用するだけでなく、フリートDPS艦のサブウェポンとして装備されることも多いです。
スキャン解像度低下の方は全く使わないかといえばそうでもなく、ロックオン切り替えが頻繁に必要な船、特に大規模フリートでのLogi役などは、スキャン解像度を下げることで大幅に働きを鈍くさせることが出来ます。
弱点は近距離戦の船には効きにくいことと、やはりドローン艦に対してほとんど意味が無いこと。
とはいえ、EWARで敵のDPS役を封じることにあまり意味はなく、敵のサポート艦などを封じることの方が重要ですし、意味があります。
ターゲットペインター。当てた船のシグネチャ半径を拡大するEWAR。「TP」と略されることもあります。
MinmatarのEWAR艦が、シグネチャ拡大率を増加させるボーナスを持っています。また、VigilとHyenaがこれの射程延長ボーナスを持っています。
他のEWARのように妨害効果がわかりやすく現れるということがなく、比較的地味なEWARとされます。
しかし、シグネチャ半径が1.3倍になるということは、その船に対して撃たれるタレットの実効トラッキングが1.3倍速くなり、撃たれるミサイルの実効ダメージが1.3倍になるということを意味します。7)
他のEWARとは方向性は違いますが、言うまでなく強力な妨害の一つです。
ダメージを増加させるという性質上PvPよりもむしろPvEで使われることが多く、特にRavenなどのミサイルBSが、実効ダメージを増加させる目的でTPを併用することがよく見られます。
エネルギーニュートラライザー。当てた船のキャパシタ残量を強制的に減らすEWAR。
もっぱら「Neutralizer」を略して「Neut」と呼ばれます。
AmarrのT2EWAR艦及びArmageddon、Blood Raider艦が、これの射程あるいはエネルギー消失量を増加させるボーナスを持っています。
キャパシタを消費して起動させるアクティブMODは強力なものが多く、例えば船のレジストを増加させるアクティブハードナー、HPを回復させる各種リペアラ、最高速を大幅に上げるAB/MWDなどは、ほとんど全ての船が使用しています。
Neutによってキャパシタを減らせばそれらを使用しにくくすることになり、キャパシタを空にすることが出来れば強制的にそれら全てを停止させることが出来ます。
NeutはS/M/Lとサイズが分かれており、大きい物ほど消失量が多く、射程が長く、装備コスト・起動コストが重くなります。
大きい船ほどキャパシタ量が多く、小さい船ほど少ないという性質上、小型艦がSサイズのNeutを大型艦に仕掛けるのはあまり効果的とはいえません。
逆に大型艦がLサイズNeutを小型艦に仕掛けた場合、たいていは一発で食らった側のキャパシタが空になり、容易に無力化することが出来ます。
プロジェクタイルタレットやミサイルランチャーなどのキャパシタを使わないMODは止められず、またキャパシタブースターなど即時的にキャパシタを回復する手段を持っている船にも効果が薄いですが、それでも操艦の自由度を大きく制限できることに変わりなく、特に大型のものは極めて強力なEWARの一つとされています。
エネルギーノスフェラトゥ。吸血鬼よろしく当てた船のキャパシタ残量を吸収し、自艦のキャパシタ残量を増加させるEWAR。
Nosferatuを略して「NOS」と呼ばれることがほとんどです。
基本的に、Neutにボーナスを持っている船はNOSにも同様のボーナスを持っています。
Neutと同様に対象のキャパシタを減らすEWARですが、Neutが自艦のキャパシタを消費しながら対象のキャパシタを減らすのに対し、NOSは対象のキャパシタを減らすと同時に自艦のキャパシタを増やす効果を持っています。
そのため一見NOSの方がNeutより優れているように思えますが、NOSには「キャパシタ残量を吸収できるのは、起動時に自艦のキャパシタ残量8)が対象の船のキャパシタ残量より少なくなっているときだけ」という条件があります。
そのため、対象の船のキャパシタ残量が自艦のキャパシタ残量より少なくなることはなく、Neutのように「相手のキャパシタを消し飛ばして封殺する」といった使い方はできません。
その特性上運用の仕方がNeutとは逆で、大型艦が小型艦に仕掛けるには向かず、小型艦がより大型の船を相手にする時のキャパシタ管理を補助するために使うことがメインとなります。
ただしBlood Raider艦は「自艦のキャパシタ残量に関係なくNOSが作動する」というボーナスを持っているため、それらに装備したNOSはNeutと同じように、敵を封殺するために使うことができます。
ワープジャマー。文字通り当てた対象のワープとジャンプドライブを封じ、離脱を阻止するEWAR。
Warp Scrambler(ワープスクランブラー)とWarp Disruptor(ワープ妨害器)の2種類があり、これらは合わせて「Point」と呼ばれることもあります。
PvPにおいて一番の基本は「敵を逃さない」ということであり、ScramblerかDisruptorを装備することはPvPの第一歩と言えます。
InterceptorsとGallenteのT2EWAR艦及びMordus Legion艦が、これらの射程を伸ばすボーナスを持っています。
Warp Scramblerは主に「Scram(スクラム)」と呼ばれ、またWarp Disruptorに比べ射程が短いことから「Short Point」とも呼ばれます。
Scramは対象のワープだけでなくMWD/MJDの起動も阻止する効果があり、妨害強度9)も高く、相手をがっちり捕まえることに特化しています。
Scramblerに比べ、より射程の長いWarp Disruptorは「Long Point」と呼ばれます。また、基本的に「Disruptor」と言った時は、Tracking DisruptorではなくWarp Disruptorのことを指します。
DisruptorはScramとは違い、MWD/MJDの起動を阻止することができません。妨害強度も低いです。その代わり射程がScramの倍以上あり、先手を打って敵を捕まえることに向いています。
また、敵のScram射程に入りたくない、つまりこちらのMWDを止められたくない時にはDisruptorが用いられます。
インターディクションスフィアランチャー。Warp Jammerの一種で、範囲型ワープ妨害の一つ。
Interdictors専用装備で、High/Lowsecでは使用不可能。
起動することでその場にWarp Disrupt Probeを設置し、Probeと中心とした一定範囲内でのワープとジャンプドライブの起動を封じるEWAR。
ロックオンを必要とせず多数の船を即時に足止めできる上、本体がある程度自由に動けるため非常に取り回しやすいです。
そのため、Nullsecでの戦いで一番よく使われるワープ妨害手段となっています。
なお、これにはMWD/MJDの起動を阻止する効果はありませんが、Warp Core Stabilizerを用いて突破することはできません。
ワープ妨害フィールド発生装置。Warp Jammerの一種で、範囲型ワープ妨害の一つ。
Heavy Interdiction Cruisers専用装備で、High/Lowsecでは使用不可能。
起動することで、その船を中心とした一定範囲内でのワープとジャンプドライブの起動を封じるEWAR。
Interdiction Sphere Launcherとは違い弾薬を必要としないため、キャパシタの続く限り半永久的に範囲ワープ妨害を展開し続けることができます。
これをWarp Core Stabilizerを用いて突破することはできません。また、これにはMWD/MJDの起動を阻止する効果はありません。
デメリットとして、これを起動している間はリモートアシスト10)を一切受け付けなくなります。
HIC自体は非常に固い船ですが、リモートリペアを受けずにずっと攻撃を耐え続けるということはできないため、リペアを受けるためにワープ妨害の展開を解除する必要が少なからず出てきます。
Focused Warp Disruption ScriptとFocused Warp Scrambling Scriptという専用のスクリプトがあり、これを使用すると範囲型ワープ妨害ではなく単体への強度100(=Warp Core Stabilizer無効)のWarp Jammerとして機能するようになります。
加えて、
といった効果を得られます。
また、Scrambling Scriptは射程が短い代わりにスクラム同様のMWD/MJDの起動阻害効果が付与されます。
ただし、起動時のリモートアシスト無効はそのままです。
この状態ではLowsecでも使用できるため、LowsecでSupercarrier/Titanを単独で捕まえることの出来る数少ない手段の一つ12)となっています。
ステイシスウェビファイヤー。当てた船の最高速を引き下げるEWAR。
略して「Web」「Webi」などと呼ばれます。
相手の速度を低下させるという効果は単純ながら非常に強力で、Pointと併用しての離脱阻止13)、対象の攻撃回避率低下や、敵の特性を理解していれば自艦の回避率向上に繋げられるなど、様々な恩恵をもたらします。
MinmatarのT2EWAR艦及びBlood Raider艦がこれの射程延長ボーナスを、Serpentis艦がこれの速度低下率上昇ボーナスを持っています。
PvPにおいて非常に重要かつ基本的なEWARで、敵の攻撃回避率低下つまり自艦の攻撃力向上にもつながることからPvEでもよく使われるEWARです。
また、単なる妨害としてだけでなく、応用すればカタパルトといった補助的な扱い方もできます。
ステイシスグラップラー。当てた船の最高速を引き下げるEWAR。
戦艦専用モジュールかつ1隻当たり1つまでの装備制限があります。
射程内で一定の減速効果を持つWebとは異なり、Optimalがなく長いFalloffを持ちます。
そのため、ごく至近距離でのみ強力な減速効果を発揮し、距離が離れるに連れて効果が下がっていきます。
しかし、上記の制限のためか最大減速効果は80%を超え、ほとんどの範囲でWebを上回る効果を発揮します。
注意すべき点として、このMODはWebではないため、BhaalgornやVindicatorの持つWebボーナスの対象にはなりません。
シグネチャサプレッサー。正式には「Signature Radius Suppressor(シグネチャ半径サプレッサー)」。その名の通り、自艦のシグネチャ半径を小さくするEWAR。
BSクラス専用装備で、Prototype Inferno Module14)の一つ。
元は「Target Spectrum Breaker(ターゲット周波数ブレーカー)」という名前で難解な効果15)を持つ防御的なEWARでしたが、2021年3月に名前と効果が変更されて現在に至ります。
アクティブモジュールではありますが、起動していなくてもわずかながらシグネチャ縮小効果が得られ、起動すれば大きな縮小効果が得られます。その代わり起動時間は短く、一度起動すると再度起動できるようになるまでに長いクールタイムを要します。
性質としてはAF/HAC専用装備のAssault Damage Controlに近く、それのBS版のようなものと言えるでしょう。
艦隊戦において敵の集中攻撃を受けた際に起動して、リモートリペアを受けるまでの時間稼ぎをするモジュールと考えて差し支えありません。
とはいえ、レジスタンスではなくシグネチャ半径を縮小するという性質から、小型艦からの攻撃に対する防御効果はほとんどありません。
同じBSクラス、あるいはDNやCVなどの主力艦からの攻撃に対してなら、ある程度のダメージ軽減効果を見込めます。