Battle of B-R5RB | |||
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年月日 | 2014年1月27日~28日 | ||
場所 | Immenseaリージョン・B-R5RB | ||
結果 | N3/PLの大敗北。双方合わせて約11T ISKの損害が出る。 | ||
主な交戦勢力 | |||
・ClusterFuck Coalition Goonswarm Federation RAZOR Alliance Fidelas Constans Gentlemen's Agreement ・DTF Darkness of Despair SOLAR FLEET Against ALL Authorities Black Legion. その他CFC/SW所属勢力多数 | Pandemic Legion Northern Coalition. Nulli Secunda その他N3所属勢力多数 |
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指揮官 | |||
Lazarus Telraven Sort Dragon | Manfred Sideous Elise Randolph Vince Draken |
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戦力(推定)1) | |||
Titan:143隻 MS:273隻 DN:831隻 CV:235隻 サブキャピタル:2300隻以上 | Titan:72隻 MS:170隻 DN:385隻 CV:488隻 サブキャピタル:1500隻以上 |
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損害(CCP公式発表) | |||
Titan:15隻沈没 MS:2隻沈没 DN:106隻沈没 CV:5隻沈没 サブキャピタル:1888隻沈没 損失額:約2.2T ISK | Titan:58隻沈没 MS:11隻沈没 DN:259隻沈没 CV:112隻沈没 サブキャピタル:1251隻沈没 損失額:約8.5T ISK |
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キルレポート |
The Battle of B-R5RB(B-R5RBの戦い)もしくはThe Bloodbath of B-R5RB(B-R5RBの殺戮)は、2014年1月27日に南部Nullsec"Immensea"のソーラーシステム"B-R5RB"で発生した大規模な戦闘である。
双方の被害額の合計は約11Trillion(11兆)ISKで、当時のレート2)で換算するとおよそ30万~33万ドルになる。
(EVE Onlineでは、リアルマネーを使ってゲーム内通貨であるISKを買うことができる。あくまでもこの換算は「損失を全てリアルマネーで補填しようとしたらそれだけ掛かる」というだけであり、実際にそれだけのリアルマネーが失われたわけではない。)
その損害の大きさと、戦いの発生した原因が「家賃の滞納」であったことからゲーム外でも広く取り上げられた。
奇しくも、この日は同じように一人のプレイヤーのミスから大規模な戦いに発展したAsakaiの戦いからちょうど1年後の日であった。
当時、Catchを中心とした南部Nullでは、前年の11月に勃発したHalloween Warが続いていた。Halloween Warは、Northern Coalition.(NCdot)及びNulli Secunda(S2N)を中心としたN3 Coalitionが、Darkness of Despair(DD)及びAgainst ALL Authorities(AAA)を中心としたStainWagonの領土を奪取すべく仕掛けた戦争で、これに際してStainWagonにはSOLAR FLEET、Black Legion.が合流し、DTFを名乗る連合に発展した。(あるいは単純にRUS3)とも呼ばれる)
Pandemic Legion(PL)がN3の側で参戦し、Goonswarm Federation率いるClusterFuck Coalition(CFC)はDTFの支援に回ったことで、N3/PL対RUS/CFCという構図の戦いに発展した。
戦況はN3優位で、少しずつではあるがN3はCatchの領土を侵食しつつあった。
当時のB-R5RBはS2Nが保有していたが、実際にはPLの前線基地として使用され、ステーションにはPLの各種戦力が集結されていた。
そして、ステーション等の管理権限をPLに移管するため、1月8日、B-R5RBのTCU4)とステーションの管理権限がS2N所属コーポレーションのH A V O Cに移管された5)。
このとき、一つのミスが起こった。
TCUを維持するためには、NPCによる治安維持組織“CONCORD”に対して維持費(いわゆる家賃)を支払わなければならない。金額は大したものではないが、支払いを忘れればTCUはオフラインになり、領有権は即座に失われる。そのため通常であれば維持費は自動支払い設定にするのだが、この移管の際にその「自動支払い設定にする」項目にチェックが入っていなかったのだ。6)
そして、管理権限がH A V O Cに移管されてから最初の維持費支払い期限である1月27日7時36分(EVE標準時=世界標準時)、維持費未払いのためTCUはオフラインになった。
当時の領土戦機構において、TCUは非常に大きな意味を持っていた。ソーラーシステムの領有権を奪うためにはTCUを破壊しなければならないが、TCUとステーションが同じアライアンスによって保持されていた場合、TCUは無敵になり破壊することができない。まずステーションの管理権限を4日かけて奪取しなければ7)、TCUの破壊に着手できないのである。
だが、このときは維持費未払いでいきなりTCUが機能を停止してしまった。オンラインになっているTCUが存在しない、あるいはTCUとステーションの保有アライアンスが異なる場合は、ステーションの管理権限奪取に猶予時間は発生せず、火力さえあればすぐに奪取できる。
そして、ステーションの管理権限を持っていれば、敵の入港を制限することができる8)。つまり、B-Rのステーションの管理権限がCFC/RUSに渡ってしまえば、PLはその戦力の多くを凍結されることになってしまうのだ。
一旦オフラインになったTCUを再度オンライン化するには8時間掛かる。TCUが停止したことを知ったS2NはすぐにTCUのオンライン化作業に入った。TCUのオンライン化が完了すればステーションが脆弱な状態から脱し、ステーションをロックダウンされるという危機からひとまず逃れられる。ただ、時間帯が欧米圏では月曜の未明から昼にかけてだったこともあり、大規模な防衛フリートを編成するようなことはしなかった。
CFCがこれに気づいたのはEVE標準時12時ごろであった。CFC/RUSはB-Rの領有権とステーション管理権の奪取を企図し艦隊を編成。13時には、Dominixを主力とする約250隻のサブキャピタル艦隊と40隻の攻城艦を出撃させた。
B-R5RBでは予備も含めて多数のTCUがオンライン化作業に入っていたが、それらは全てCFC/RUS連合艦隊によって破壊された。更にCFCはステーションの管理権限の奪取にも成功し、管理権限はS2NからRAZOR Alliance(RZR)の手に渡った。
前線基地を封鎖されてしまったPLは、所属パイロット全員に緊急呼び出しを実施。当時の本拠地であったMTO2-2からのサイノチェーン9)を構築し、B-Rへキャピタル艦隊の移動を開始した。
PLが艦隊を移動させている間、CFCも同様に全パイロットへの緊急呼び出しをしていた。このときのことを、CFC艦隊指揮官のLazarus TelravenはReddit上でこう述べている。
“I called his phone and woke him up when things looked like it was going to escalate because when you need someone to bang drums to get numbers you get mittani. He was skiddish and hessitant and I think came close to trying to get me to not go in but had he told me not jump I would have jumped anyways GOTTA TRUST THE GUT”
(「この戦闘が更に拡大することが予想できたので彼に直接電話して叩き起こしたよ。なんといっても鐘を鳴らして人を集めるにはMittani以上の適役はいないからね。彼は懐疑的で私にその戦闘を停止しろと今にも言いそうだったけど、そう言われても私は飛び込んで行ってただろうね。直感を信じるしかないだろう?」)
ステーションはRZRによって制圧された。RZRは新たなTCUを設置し、オンライン化作業に入った。そのうち1つはステーション近傍に設置されていた。
TCUがオンラインになるまではステーションは脆弱であり、すぐに奪回される可能性があるということでもある。逆に、これがオンラインになればステーションのロックダウンが完了する。
Manfred Sideous率いるPL/N3艦隊は、TCU及びCFC/RUS艦隊を排除すべく、CFC/RUSが待ち構えるステーション前にワープした。
PL/N3は、当時「Wrecking Ball(破壊の鉄球)」と呼ばれるドクトリンを採用していた。これは各種キャピタル/SlowcatCV10)/Dominixを軸としたドクトリンで、数日前に発生したHED-GPの戦いではこれを用いてCFC/RUSのキャピタル艦隊を破っていた。
しかし、HED-GPのときとは違い、PL/N3艦隊はCFC/RUSに対して優位な数を揃えてはいなかった。
PL/N3の人数が少ないことを見て取ったLazarusは、L7XS-5に待機させていた戦力を投入することを決意。Titan及びスーパーキャリアーを含めた各種戦力をB-R5RBにジャンプさせた。これに反応してPL/N3もTitan及びDNを始めとした増援を投入した。
最初に撃沈されたTitanは、PLに所属するRistanoのErebusだった。
数でこそCFC/RUSに遅れは取ったものの、キャピタル艦隊の扱いに一日の長があるPL/N3はよく火力を集中させることに成功し、当初は双方の損害は概ね互角だった。
当初、TiDi11)は30%程度とさほど強くかかっていなかったが、双方がドローンの展開を開始した時点で負荷が激増し、TiDiは最大値の10%12)まで引き伸ばされた。以後、TiDi10%の状態は22時間にわたって続くことになる。
強烈なTiDi環境下において最も有効に機能する兵器は、Titanが装備しているDoomsday Device(DDD)である。これは、発射間隔こそ長いが一撃で200万ダメージを叩き出す超兵器で、並のキャピタルなら一撃で撃沈、防御重視の装備であっても2発は耐えられず、MSやTitanに対しても数発で致命傷を与えられるという代物である。
そのため、このような大規模なキャピタル艦隊同士の戦闘においては、Titanが何隻残っていてどれだけDDDを発射できるのかが最も重要な要素となる。
PL/N3は、CFC/RUSの使っているRagnarokがさほど防御に優れていないということに気づき、これに攻撃を集中させ次々に撃沈していった。
そんな中、EVEのプレイヤーの代表であるCSMの一員にしてCFCに所属するアライアンス“DARKNESS.”のCEOであるSort Dragonが、接続障害によってオフラインになった13)。Manfredから指揮を引き継いだVince Drakenは、Sort Dragonの乗るAvatarに攻撃を集中させた。しかし、彼はすぐに再接続して戦場に復帰した上に、彼のAvatarは非常に高い防御力を持っていたためにかなりの攻撃を耐えることができた。最終的に彼のAvatarは撃沈された14)が、味方からの多くのリモートリペアを受ける事ができたので撃沈までに長い時間がかかった。
この1隻のAvatarが撃沈されるまでの間に、CFC/RUSはPL/N3のTitanを5隻も撃沈していた。
これが戦局を大きく変えた。Titanという重要な戦力の数において差がついたために、以後のTitan撃沈競争においてCFC/RUSが大きくリードすることになった。
最終的にCFC/RUSが15隻のTitanを失ったのに対し、PL/N3はB-Rに投入した72隻のTitanのうち58隻を失うことになった。それまでのEVEの歴史において、一度の戦いで沈没したTitanの数は最大でも12隻であった15)。
更に、SortのAvatar撃沈とほぼ同時である22時49分、B-R5RBにおけるRZRのTCUのオンライン化が完了した。PL/N3はB-Rの奪還を断念し、投入した戦力を可能な限りB-Rから脱出させることに目標を切り替えた。
27日14時頃に始まった戦闘は、概ね21時間にわたって続いた。
PL/N3は58隻のTitanを失うなど8.5T ISKに及ぶ損害を出した他、B-Rの領有権及びステーションの入港権を失うなど完全な敗北を喫した。対するCFC/RUSもTitanを15隻失うなど約2.2T ISKの損害を出した。
双方の合計損害額は約11T ISKになり、冒頭で述べたようにこれはPLEX換算で概ね30~33万ドルに匹敵する。
Manfred Sideousは以下のようなコメントを残している。
“We will retake it if possible….I hope nobody quits over this fight. It has been truly epic to be part of as its the largest fight in the history of online gaming. Its a shame if someone quits this is all part of the game and a ship hull is the price of admission for fun fights. This is Eve HTFU16)
(「もう一度できるならやりたいな…この戦闘の後に辞めると言い出す奴がいなければいいけど。今回のオンラインゲームの歴史の中でも最大のこの戦いに参加できたのは最高だよ。もし辞める奴がいたら非常に残念だね。このゲームはそういうものだし、艦船は楽しい戦いをするための対価でしかないんだから。これこそがEVEだ。HTFU」)
EVEの歴史上他に類を見ない大規模戦闘であったことから、戦闘に関する統計をCCPが公式に発表している。
以下にその内容を引用する。
また、この戦いを記念して、B-R5RBには“Titanomachy”(ティタノマキア)というモニュメントが設置された。
この戦いの直後である1月28日には、全くの偶然ではあるが「キャピタル艦の残骸をディティールアップする」内容を含むアップデートが予定されていた。ティタノマキアはこの新しいTitanの残骸を利用していて、戦いの痕跡を永久に残している。
稼働可能なキャピタル戦力の大半を失ったN3は、Immensea及びTenerifisの領土を放棄することを決定。これらの領土を敵が占領していくのを妨害しつつ、その間に戦力を立て直すことにした。
PLは南部に領土こそ持っていなかったが、拠点としていたB-Rのステーションをロックダウンされ、何人かのPLメンバーはその資産のほとんどを凍結させられてしまった。そのために、PLのCEOであるGrath TelkinはCFCと交渉し、Halloween Warから手を引くことと引き換えに、PLがB-Rから資産を持ち出せるようにした。
この後、CFCも同様にHalloween Warから手を引いた。Halloween WarはN3対RUSという構図となり、翌年の4月まで続くこととなる。
B-Rの敗戦からから2ヶ月程度でキャピタル戦力の立て直しを完了したN3は、CFCの後ろ盾を失ったRUSを駆逐し南部Nullをほぼ完全に制圧する。
N3は更にその奥に住むCFC領に攻め入ろうとするが、CFCとの直接対決に勝利することができず、Fountain以北を攻め落とすことができなかった。
そうして戦局が硬直した2015年4月、PLがCFCと契約しS2Nを攻撃するという事態が発生。N3はこれに対処することが全くできなかった。それからまもなく、N3の中核であったNCdotは全ての友好関係を解除し南部から撤退。N3は完全に崩壊し、巨大な空白地帯となった南部Nullは群雄割拠の戦国時代に入ることとなった。