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backstory:pax-ammaria [2017/09/16 23:23] – 作成 bartlett | backstory:pax-ammaria [2020/11/10 13:51] (現在) – 外部編集 127.0.0.1 | ||
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- | 毎年の最終週、宮廷報道室の人間はパックス・アマーリア…アマー人なら誰でも知っているハイデラン7世の名著…の版を重ねることに専念する。誰にも知られることなく。 | + | 毎年の最終週、宮廷報道室の人間はパックス・アマリア…アマー人なら誰でも知っているハイデラン7世の名著…の版を重ねることに専念する。誰にも知られることなく。 |
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それは驚くべき話ではないということだ。 | それは驚くべき話ではないということだ。 | ||
宗教評議会はハイデランの言葉が不可侵かつ不変のものだと熱弁するだろうが、 | 宗教評議会はハイデランの言葉が不可侵かつ不変のものだと熱弁するだろうが、 | ||
- | パクシスタズ(より広い範囲を扱う重版履歴愛好コミュニティが嘲笑的に名付けた蔑称)は「彼らの」パックス・アマーリアが被ってきた細部の編集や修正の歴史を静かに、 | + | パクシスタズ(より広い範囲を扱う重版履歴愛好コミュニティが嘲笑的に名付けた蔑称)は「彼らの」パックス・アマリアが被ってきた細部の編集や修正の歴史を静かに、 |
しかししつこく、耐え難いくらいくどくどと説明してくれるだろう。 | しかししつこく、耐え難いくらいくどくどと説明してくれるだろう。 | ||
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- | パクシスタズは帝権保安省の寛容、慈悲、慈愛にすがり…注意深く監視されるハニーポット・トラップとして、アマー帝国内外で存在を許されている。 | + | パクシスタズは帝国保安省の寛容、慈悲、慈愛にすがり…注意深く監視されるハニーポット・トラップとして、アマー帝国内外で存在を許されている。 |
というか、この異端派は保安省の好む「包括的」解決法を持ち出すにはあまりに微弱な存在だ。彼らがマイナーであり続ける限り、パクシスタズは枕を高くして寝ていられる。 | というか、この異端派は保安省の好む「包括的」解決法を持ち出すにはあまりに微弱な存在だ。彼らがマイナーであり続ける限り、パクシスタズは枕を高くして寝ていられる。 | ||
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第62版について知ろうとするなら、自分自身がこのパクシストになる必要がある。 | 第62版について知ろうとするなら、自分自身がこのパクシストになる必要がある。 | ||
- | 彼らは追放者として第62版の記録を隠し持っており、かく言う私も彼らの1人からパックス・アマーリアの隠された事実を教えてもらったのだ。 | + | 彼らは追放者として第62版の記録を隠し持っており、かく言う私も彼らの1人からパックス・アマリアの隠された事実を教えてもらったのだ。 |
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お察しの通り、第62版はある間違いを犯していた。 | お察しの通り、第62版はある間違いを犯していた。 | ||
- | パックス・アマーリアの編纂史で唯一ではないが、とても珍しいたった1つの間違いを。 | + | パックス・アマリアの編纂史で唯一ではないが、とても珍しいたった1つの間違いを。 |
不幸なことに、編集を手がけた人間(と共同作業にあたった編集者、編集長、編集長の上司、様々な形で関与した当局者、そしてめいめいの家族)のお粗末さのため、 | 不幸なことに、編集を手がけた人間(と共同作業にあたった編集者、編集長、編集長の上司、様々な形で関与した当局者、そしてめいめいの家族)のお粗末さのため、 | ||
問題の間違いは印刷作業が終わるまで誰にも気づかれなかった。 | 問題の間違いは印刷作業が終わるまで誰にも気づかれなかった。 | ||
行 125: | 行 125: | ||
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この不祥事に関わった人間の多くが無実を訴えるか慈悲を乞うたが、問題が問題だ。 | この不祥事に関わった人間の多くが無実を訴えるか慈悲を乞うたが、問題が問題だ。 | ||
- | 間違いの内容とは、本来ならアマーリアと綴るべきところがアマッリアになっていたということだった。 | + | 間違いの内容とは、本来ならアマリアと綴るべきところがアッマリアになっていたということだった。 |
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行 145: | 行 145: | ||
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- | 侍従長配下の官吏たちが編集作業という年末の恒例行事に疲れきり、侍従長公邸の奥深くから響きわたった悲鳴が止んだとき、 | + | 侍従長配下の官吏たちが編集作業という年末の恒例行事に疲れきり、侍従長公邸の奥深くから響きわたった悲鳴がやんだとき、 |
彼らはもはや進むも退くもならぬ状況にいる自分たちを見つけた。 | 彼らはもはや進むも退くもならぬ状況にいる自分たちを見つけた。 | ||
こんな酷い手違いは前例がなく、どうすればいいのか知っている官僚は1人もいなかった。 | こんな酷い手違いは前例がなく、どうすればいいのか知っている官僚は1人もいなかった。 | ||
行 169: | 行 169: | ||
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- | 室長は室長代理に文書を渡すなり、「私が責任を取る」と言って最寄りのエアロックから身を投げてしまった。 | + | 室長は副室長に文書を渡すなり、「私が責任を取る」と言って最寄りのエアロックから身を投げてしまった。 |
- | 室長代理の反応も鈍かった。宗教評議会の命令を実行しようにも、もうパックス・アマーリア第62版は発送されてしまったという現実に押し潰されそうになっていたのだ。 | + | 副室長の反応も鈍かった。宗教評議会の命令を実行しようにも、もうパックス・アマリア第62版は発送されてしまったという現実に押し潰されそうになっていたのだ。 |
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行 231: | 行 231: | ||
今話した出来事は何年も前に起こったことだが、評議会の猟犬たちの吠え声はまだ聞こえている。 | 今話した出来事は何年も前に起こったことだが、評議会の猟犬たちの吠え声はまだ聞こえている。 | ||
ひとたび目を覚ました執行官は任務を達成するまで休息というものを知らないのだ。 | ひとたび目を覚ました執行官は任務を達成するまで休息というものを知らないのだ。 | ||
- | そして、所在不明のパックス・アマッリアがあり続ける限り、彼らは血塗れの狩りを止めようとしないだろう。 | + | そして、所在不明のパックス・アッマリアがあり続ける限り、彼らは血塗れの狩りを止めようとしないだろう。 |
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行 241: | 行 241: | ||
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- | お話した通りだ、カプセラ君。この本をどこか安全なところに隠しておいたほうがいいと言った意味がお分かりいただけだかな。 | + | お話しした通りだ、カプセラ君。この本をどこか安全なところに隠しておいたほうがいいと言った意味がお分かりいただけだかな。 |
私は君がそれをどこで手に入れたのか知りたくないし、次にどこへ持って行こうとしているのかも知りたくない。 | 私は君がそれをどこで手に入れたのか知りたくないし、次にどこへ持って行こうとしているのかも知りたくない。 | ||
私たち2人は会わなかったんだ。君の本はここに存在していない。いいね? | 私たち2人は会わなかったんだ。君の本はここに存在していない。いいね? |